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京都地方裁判所 昭和44年(手ワ)332号 判決 1970年6月01日

原告

沢村英三

代理人

夏目文夫

渡辺哲司

被告

寺田弘道

田中新二

右両名代理人

松枝述良

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

請求の趣旨

被告等は原告に対し各自金一、五〇〇、〇〇〇円およびこれに対する昭和四三年八月五日から支払ずみにいたるまで年六分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は被告等の負担とする。

との判決ならびに仮執行の宣言を求める。

請求の趣旨に対する答弁

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

請求原因

一、原告は、被告等が拒絶証書作成義務免除のうえ裏書した左記約束手形一通(本件手形)の所持人である。

金額 金一、五〇〇、〇〇〇円

支払期日 昭和四三年八月五日

支払地、振出地 京都市

支払場所 京都信用金庫三条支店

振出日 昭和四三年六月三〇日

振出人 株式会社桑原商店

受取人、第一裏書人 寺田弘道(被告)

第一裏書被裏書人、第二裏書人 田中新二(被告)

第二裏書被裏書人第三裏書人 五光工芸株式会社

第三裏書被裏書人 沢村英三(原告)

二、原告は、振出日および受取人白地の本件手形を支払期日に支払場所に呈示して支払を求めたが、拒絶された。

三、原告は、昭和四三年六月三〇日、訴外五光工芸株式会社に対し、弁済期日同年八月五日の約定の下に、金一、五〇〇、〇〇〇円を貸付けた。

四、株式会社桑原商店および被告等は、同日、三記載の債務について連帯保証をした。

株式会社桑原商店および被告等が本件手形の振出又は裏書をしたのは、右連帯保証の趣旨でしたのである。

五、よつて、原告は被告に対し各自右手形金又は右貸金一、五〇〇、〇〇〇円およびこれに対する昭和四三年八月五日から支払済まで年六分の割合による法定利息又は遅延損害金を求める。

請求原因に対する認否

請求原因一、二の事実は認めるが、その余の事実は争う。

抗弁

本件手形の支払期日は、被告らの裏書当時、昭和四三年七月三一日と記載され、その後変遷されたものであり、被告らの手形債務は時効により消滅している。

再抗弁

原告は昭和四四年春以来被告らに対し本件手形金の支払を再三再四催告しており、時効は中断されている。

証拠<省略>

理由

一、下記(一)、(二)の事実は当事者間に争がない。

(一)、原告は、被告等が拒絶証書作成義務免除のうえ裏書した左記約束手形一通(本件手形)の所持人である。

金額 金一、五〇〇、〇〇〇円

支払期日 昭和四三年八月五日

支払地、振出地 京都市

支払場所 京都信用金庫三条支店

振出日 昭和四三年六月三〇日

振出人 株式会社桑原商店

受取人、第一裏書人 寺田弘道(被告)

第一裏書被裏書人、第二裏書人 田中新二(被告)

第二裏書被裏書人、第三裏書人 五光工芸株式会社

第三裏書被裏書人 沢村英二(原告)

(二)  原告は、振出日および受取人白地の本件手形を支払期日に支払場所に呈示して支払を求めたが、拒絶された。

二、遡求義務について。

いわゆる白地手形は、後日手形要件の記載が補充されてはじめて完全な手形となるにとどまり、その補充があるまでは未完成の手形にすぎないのであるから、白地手形による支払のための呈示は遡求の要件を充足しない。受取人および振出日は約束手形の手形要件である(手形法第七五条第五号第六号)。したがつて、受取人および振出日白地の約束手形による呈示は遡求の要件を充足しない。(最高裁判所昭和三三年三月七日第二小法廷判決、民集一二巻三号五一一頁、最高裁判所昭和四一年一〇月一二日第一小法廷判決、民集二〇巻八号一六三二頁参照)

三、保証債務の成否について。

<証拠>によれば、株式会社桑原商店、被告寺田、同田中は、五光工芸株式会社において原告から金一五〇万円を借受けるについて、自己の信用を利用させる意味で、それぞれ本件手形の振出、第一裏書、第二裏書の各手形行為をなし、第三裏書人五光工芸株式会社は、本件手形により原告から金一五〇万円を借受けた事実を認めうる。

A、B、Cが、DにおいてEから金員を借受けるについて、自己の信用を利用させる意味で、それぞれ約束手形の振出、第一裏書、第二裏書の各手形行為をなし、第三裏書人Dが右手形によりEから金員を借受けた場合、A、B、Cが融通手形の融通者として手形債務負担の意見に加えてDの金員借受債務につき民法上の保証債務負担の意思を有するのが通常であると認めえないから、右設例の場合、A、B、CがDの金員借受債務につき民法上の保証債務を負担したと推認しえない。

<証拠>のうち保証債務成立の原告主張事実に符合する部分は採用し難く、他に右事実を認めうる証拠はない。

四、よつて、原告の本訴請求は、すべて失当としてこれを棄却し、民事訴訟法第八九条を適用し主文のとおり判決する。(小西勝)

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